【第23号】シュレーディンガー博士の異常な愛情

天才物理学者にしてヨーロッパ随一のモテ男だったシュレーディンガー博士の物語
金谷一朗(いち)
2021.05.21
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このレターには音声版があります

いちです,おはようございます.

今週は物理学界きっての「モテ男」である,エルヴィン・シュレーディンガー博士をご紹介します.彼の名前はご存じなくても「シュレーディンガーの猫」という言葉は聞いたことがあるかもしれません.彼は物理学の地平を一気に押し広げ,また「分子生物学」という新しい学問の扉を開きました.

そんなシュレーディンガー博士の研究と,そして一風変わった私生活をお話していきたいと思います.

シュレーディンガー博士と猫

知的な眼差し,通った鼻筋,きりっと結ばれた口元…おちゃめな印象のあるアルベルト・アインシュタイン博士に比べると対照的とも言える典型的美男なのが,オーストリア出身の物理学者エルヴィン・シュレーディンガー博士です.

エルヴィン・シュレーディンガー
エルヴィン・シュレーディンガー

シュレーディンガー博士は「波動力学」という物理学の一分野を築き上げた天才物理学者です.

これは非常に小さな粒子,例えば「電子」に関わるものです.電子は小さな粒なのですが,粒であると同時に「波」の性質も持つのです.シュレーディンガー博士は,この波としての性質がどのようなものであるのか,具体的に言えばどのような数式に従うのかを考えて「シュレーディンガー方程式」という式を発見しました.

このシュレーディンガー方程式は電子や原子の世界で起こる自然現象を次々と説明することが出来ました.

電子や原子の世界では「Aが起こったからBが起こる」という確実なことが言えないのです.世の中は必然が積み重なって偶然が生まれていますが,その必然は電子や原子の世界の偶然が積み重なって生まれているのです.シュレーディンガー方程式は,この電子や原子の世界で起こる偶然の「確率」を予測するのに使えます.

シュレーディンガー博士がこの方程式を発表したのは1926年のことですが,実は大きな欠陥もありました.1905年にアルベルト・アインシュタインが発表していた「特殊相対性理論」を考慮していなかったのです.正確に言うと,シュレーディンガー博士は特殊相対性理論とも整合するように自身の理論の修正を試みたのですが,うまく行かないまま発表したのです.

とは言え,シュレーディンガー博士の発表は物理学の地平線を大きく拡げるものでした.

シュレーディンガー博士はまた「シュレーディンガーの猫」という思考実験によっても有名になりました.シュレーディンガー方程式は未来に起こることの「確率」を求めるものですが,当時の物理学者たちは,もし全ての条件がわかっていれば,未来に起こることは「確実に」予測できるはずだと考えていました.

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