ボルツマンが見つけたもの【第201号】
いちです,おはようございます.
先週,今週は科学系,技術系のニュースがたくさんありました.まずは「紫金山・アトラス彗星」の地球接近でしょう.日本からも見えまして,ネットに写真が数多くアップされています.
また太陽活動が活発化しており,低緯度オーロラの観測も期待できるようです.(ご参考:電磁波兵器はSFじゃない【第42号】)
宇宙と言えば「スペースX」の宇宙船「スターシップ」のブースターで史上最大のロケットである「ファルコン・ヘビー」が「お箸」でキャッチされたのも大ニュースでした.(ご参考:止まらない「スペースX」の挑戦【第51号】)
そして,そして,もうひとつ大きなニュースです.ノーベル物理学賞がAI研究者ジョン・ホップフィールドとジェフリー・ヒントンに授与されました.え,ノーベル物理学賞は物理学者に与えられるのでは……と思いますよね.物理学博士のホップフィールドはともかく,コンピューター・サイエンティストとして名高いヒントンがどうして……となるのは当然で,ご本人も「もしもノーベル賞にコンピュータ科学部門があったとしたら,我々の業績は明らかに(物理学賞よりも)そちらに該当しています」と答えています.これは,僕たちのSTEAM NEWSで取り上げないといけないテーマですよね.
STEAM NEWSでは過去に,コンピューター・サイエンス系の研究がノーベル物理学賞を受賞した際には解説を行ってきました.僕自身が小なりと言えどコンピューター・サイエンティストだからです.(2021年ノーベル物理学賞〜複雑さの中の秩序〈前編〉【第44号】と〈後編〉【第45号】)
しかし,今年(2024年)のノーベル物理学賞の解説には頭を悩ませています.内容が非常に難しく,かつ「なんで日本人が受賞しなかったんだ」という声まであるので,そこら辺の背景説明も必要なのかなあと思ったりするからです.名指しされたご本人は祝福メッセージを贈られており,さすが大人だなあというところなのですが.ほかにも,日本物理学会,人工知能学会からの声明が素晴らしく,僕から何かを付け加える余地がないという事情もあります.
とまあ,これだけ頭を悩ませていたのですが,そもそもなぜコンピューター・サイエンティストにノーベル物理学賞が授与されたのかという点について,その原点とも言える科学者に焦点をあててみたくなりました.
ルートヴィッヒ・ボルツマンと妻ヘンリエッテ
というわけで,今週はオーストリアの物理学者,哲学者ルートヴィッヒ・ボルツマン(Ludwig Boltzmann)について書いてみます.物理学界隈以外では無名のボルツマンですが,19世紀に生きた彼こそ世界の見え方を変え,20世紀のコンピューター・サイエンティストがのちに同じことを再発見する契機を作った人物です.
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《目次》
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ルートヴィッヒ・ボルツマン
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ボルツマンが見つけたもの
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ノーベル物理学賞(2024)への道標
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今週の書籍
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今週のTEDトーク
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Q&A
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一伍一什のはなし
(Cover Photo by Cristian Palmer on Unsplash)
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