2021年ノーベル物理学賞〜複雑さの中の秩序〈後編〉【第45号】

物理学者は「解けない」問題をどのように解いているのでしょうか
金谷一朗(いち) 2021.10.15
誰でも

【140字まとめ】今週はノーベル賞気象学者真鍋淑郎先生の1967年論文を題材に,物理学者と計算機科学者がどのようにして「解けない」問題を解くかについてお話します.物理学者は「昨日の計算機」で「明日の問題」を解くのです.具体例としてモンテカルロ積分とロンバーグ積分のアイディアをご紹介します.

いちです,おはようございます.

このレターは「2021年ノーベル物理学賞〜複雑さの中の秩序〈前編〉」の続きです.前号では,2021年ノーベル物理学賞の歴史的な意義についてお話をさせて頂きました.今号では,受賞者のおひとり,真鍋淑郎の業績について掘っていきます.

ノーベル物理学賞の受賞理由でしばしば語られるのは,ある分野を「開拓」したことと,開拓後も常にその分野を「先導」していたことです.もちろん,アルベルト・アインシュタインの「光量子仮説」に対するノーベル物理学賞(1921年)のように「開拓」に対してだけ与えられる場合もありますが,基本は「開拓」と「先導」がセットで評価されます.

真鍋淑郎もまた,1967年の論文 “Thermal Equilibrium of the Atmosphere with a Given Distribution of Relative Humidity” (相対湿度が一定の場合の大気の熱平衡状態)で「数値解析」による気候の「未来予測」という分野を開拓し,その後もこの分野を常に先導してきました.

同論文はこちらから読めます.

真鍋の1967年の論文は,どのぐらい新しかったのでしょうか.

ほとんどの問題は「解けない」

気象の原因となる空気や水蒸気と言った物質がどのように振る舞うかはわかっています.分子1個1個は不規則に動きますので,例えばある酸素分子の1秒後の位置を答えなさいと言ったら答えられませんが,密閉された容器の中の空気をうんと加熱してやれば圧力がどうなるかと言った質問には正確に答えることが出来ます.

気象にとって重要なのは分子1個1個の振る舞いではなく,その集団としての振る舞いなので,これに関して我々は物理法則を十分理解しています.【第43号】でご紹介した「心理歴史学」はこの気体分子の物理学のアナロジーでした.

そう,物理法則はわかっているのです.

しかし,その法則から未来を予測することは極端に難しいのです.

これは天体の運行とは事情が違います.天体の運行について,我々は物理法則を知っています.それは「ケプラーの法則」と呼ばれる法則です.もし必要であれば「一般相対性理論」という,より精緻な法則を用いることも出来ますが,通常は両者の結論が一致します.ケプラーの法則によって,何月何日の何時何分に日食が起こるということを,我々は何百年も先まで知ることができるのです.

ところが気象となると,どうでしょう.

Photo by&nbsp;<a href="https://unsplash.com/@joanmm?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText">Joan MM</a>&nbsp;on&nbsp;<a href="https://unsplash.com/s/photos/sandals?utm_source=unsplash&amp;utm_medium=referral&amp;utm_content=creditCopyText">Unsplash</a>

Photo by Joan MM on Unsplash

昭和の頃の天気予報を覚えていらっしゃいますでしょうか.当時の天気予報は「下駄と同精度」とまで言われていました.表が出たら「晴れ」裏が出たら「雨」というわけです.日本の「平均降水日数」は124日,つまり1年の1/3は雨が降る日なので,下駄つまりランダムな天気予報もそこそこ当たることになりました.

ところで,物理現象のほとんどは「微分方程式」という数式で書かれています.簡単に言うと,方程式の変数に「現在の状態」を代入すると,非常に短い時間,例えば0.001秒後の「未来の状態」が出てくる方程式です.

惑星の運行予報が正確に出来る理由は「現在の状態」が十分正確に調べられるから,そして,0.001秒後の未来を何度も何度も繰り返しても計算が狂わないからなんです.もちろん,未来予測を積み重ねるとだんだん計算誤差が溜まってしまうのですが,その影響を研究する「数値解析学」という学問が存在し,未来予測精度の向上に取り組んでいます.

天気予報が惑星の運行予報と比べて困難なのは「観測」が難しいこと,そして「未来予測を積み重ねること」が難しいことにあります.

気象観測の方は気象衛星や気象観測ブイの発達で昭和の頃よりは随分と良くなりました.とは言え,地球上の大気の気圧を例えば1メートルおきに調べていくことはまだ出来ませんし,温度,湿度,風向風速なんかも同じです.

未来予測の積み重ねが天体現象よりも難しいのも,考えなければならいプレイヤーの数を比べてみるとわかります.例えば地球の未来の位置は,太陽と地球と月の「3人」について考えておけば,少なくとも100年単位では狂いが生じません.しかし気象は,大気中のすべての分子の相互作用ですし,太陽から供給されるエネルギーもプレイヤーのひとりです.そのため未来予測は簡単にノイズにかき消されてしまいます.

この絶望的な問題に取り組んだのが真鍋淑郎でした.

彼は,当時の計算機でなんとか計算できる「ぎりぎり簡単な」地球のモデルを作りました.どのぐらい簡単にしたかというと,地面から垂直に立った1本の細い円柱にしたのです.随分乱暴に見えますが,彼以前にはコンピュータを使って地球をシミュレーションしようという「無謀な」研究者がいなかったのですから,彼は明らかにこの分野の開拓者でした.

真鍋はこのモデルを使って,例えば大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が2倍になったとしたら,大気中の水蒸気量の増加も考慮して,地球の温度が2度上昇することを示しました.この研究が「温室効果ガス」による「地球温暖化」の予測を行う研究のさきがけになりました.

真鍋の「ぎりぎり簡単な」地球モデルが正しかったのかどうかは,簡単には結論が出せません.そもそも「ぎりぎり簡単な」モデルを見つけるのは科学者の「直感」と「経験」に頼る部分が大きく,それが正しいかは実験を通してでしか検証できません.真鍋も同論文で,既知の現象に真鍋モデル(正しくは真鍋・ウェザラルドモデル)を当てはめたときの妥当性を検証していますが,試しに地球のCO2濃度を倍にするなんてことは出来ませんでした.いえ,そんな事が出来ていたら人類は今頃絶滅していたでしょう.

ただし,国連下部組織の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の報告によれば,最新のモデルを用いた計算ではCO2濃度が2倍になった場合平均気温の上昇幅は2から4.5度と見積もられているため,真鍋の1967年の計算は妥当だったと言えるのではないでしょうか.

ある現象を数値的に解きたいが「ぎりぎり簡単な」モデルがわからないということは非常によくあります.というより「ぎりぎり簡単な」モデルがわかるぐらいならば,そもそも数値的に解く必要がないということが,研究の世界ではよくあります.2021年ノーベル物理学賞はこの絶妙な突破点を高く評価したのでしょう.

世界の年平均気温(気象庁)

世界の年平均気温(気象庁)

なお,実際の観測値ですが,1906年から2005年の100年間における気温上昇幅は0.74度であるのに対し,そのうち1956年から2005年の50年間で0.65度の上昇を稼いでいます.これは人為的な温室効果ガスの排出による可能性がかなり高いとIPCCによって見られています.CO2濃度のほうですが,気象庁によると,工業化(1750年)以前の平均値が278ppm(百万分の278)であるのに対し,2019年の世界平均値は410.5ppmでした.これは過去80万年の間で最も高い数値と言われています.ただし生命が誕生した頃の地球の大気はほぼ100パーセントがCO2でした.

数値解析のやり方だって難しい

繰り返しますが,物理法則がわかっている現象について,なぜスーパーコンピュータを使ってまで計算をするのかというと,方程式が解けないからなんです.ここで言う「解く」というのは正確には「解析的に解く」と言って,数式を変形していって「解」つまりは答えを見つけることです.例えば中学校で習う「2次方程式」は式変形で厳密な解にたどり着けます.

しかし,一般的には「解ける」方程式のほうが珍しいのです.物理法則によく出てくる「微分方程式」を解くには「積分」という数学を使わないといけませんが,積分はそう簡単には出来ないのです.大学受験で出てくる方程式や積分の問題は,最初から「解けることがわかっている」ものだけなんです.

そこで,物理学者たちは手に入るコンピュータでなんとか解ける「ぎりぎり簡単な」モデルを考案します.このとき,必ず何かを妥協します.真鍋淑郎の1967年論文であれば,地球の広さについては無視しました.このような妥協を「近似」と言います.

一方,計算機科学者(コンピュータ科学者)は,より良い計算方法を考えます.このような取り組みは「数値解析学」として知られています.

少し面白い例をご紹介しましょう.長方形ではない,例えばひょうたん型の池の面積を今から計算したいとしましょう.これからお話するのは「数値積分」という方法のうち,ユニークなふたつの方法です.ひとつめの方法は,ひょうたん型の池のまわりに,きっちりと収まるように長方形の塀を立てておくことから始めます.この塀の内側へ向かって,着地点が完全にランダムになるように石を投げ込みます.「ぽちゃん」と言えば池に落ちたことになり「こつん」と言えば地面に落ちたことになります.例えば100回投げ込んで「ぽちゃん」が80回で「こつん」が20回だったとすると,ひょうたん池の面積は,塀で囲った長方形の土地の面積のおよそ80パーセントと期待できます.この計算方法を「モンテカルロ法」と言います.

モンテカルロ積分では池に石を投げ込んで,ぽちゃんという音の割合を数える

モンテカルロ積分では池に石を投げ込んで,ぽちゃんという音の割合を数える

もう一つの方法としてご紹介するのは「ロンバーグ積分」という計算方法のアイディアです.厳密な意味ではロンバーグ積分ではないのですが,雰囲気として感じ取ってください.ロンバーグ積分では,ひとまずひょうたん池を平均したようなそれっぽい長方形の面積を求めます.次に,池を左右または上下半分に分割して,それぞれについて長方形をあてはめて,両方の面積を足し算します.1回目の計算よりも2回目の計算のほうが「近似」の精度が上がります.池の分割と長方形の当てはめを無限に細かくやっていけば,いつかは正確な面積が求まりますが,それには無限の時間がかかってしまいます.ロンバーグ積分では,1回目の計算と2回目の計算から,もし無限に精度を上げていったらどこへ行き着くかを「想像」するのです.そして,その結果を池の面積として返します.

ロンバーグ積分では近似の精度を少しずつ上げていって,途中から「えいやっ」と答を想像する

ロンバーグ積分では近似の精度を少しずつ上げていって,途中から「えいやっ」と答を想像する

気象観測網とコンピュータシミュレーションを使った現代の天気予報が昭和の時代から格段に正確になった理由には,このような計算方法の進歩もあるのです.

我々計算機科学者も物理学に貢献しているのですよ.

ただし,ある物理学者はこのようなことを漏らしています.

物理学者は「明日の問題」を「昨日のコンピュータ」で解いている.計算機科学者はその逆をしている.
Numerical Recipe in C

ぐぬぬ.

複雑さの中の秩序

気象と並ぶ複雑なシステムの代表格として,生命現象が挙げられるでしょう.生命の場合,生命を構成する分子1個1個の動きがわかったところで,あまり役に立たないことは想像に難くないでしょう.また,分子の集団の統計的な性質も,あまり役に立ちません.

こたつを用意して,加熱すると,猫は自らこたつの中へ入っていきます.

それでもなお,猫を構成する分子の物理法則は,宇宙の物理法則と同じなのです.違いは,猫が極めて複雑な系であるということです.

我々はタンパク質のような巨大分子がどう振る舞うかをある程度予測できるようになってきました.細胞の振る舞いについても,良い予測がそのうちできるようになるでしょう.そうすれば,いずれ,猫や人間をコンピュータの中でシミュレートすることが出来るのかもしれません.

もうひとつ,コンピュータによって可能になった「生命科学」があります.いえ,これを生命科学と呼ぶことは,多くの科学者から反発を受けるでしょう.それは「人工生命」という考え方で,先に法則を決めておいて,その法則に従った「生命」がどのように振る舞うかを調べるものです.

詳しくは本ニュースレターの創刊号に書かせていただいたので,よろしければお読みください.

我々は決して「明日のコンピュータ」で「昨日の問題」を解いているだけではないことを,物理学者にお伝えしたくて書いてみました.

おすすめ書籍

温室効果ガスの排出量をゼロにするしか,我々が生き残る道はない.「気候大災害」を回避するために,ビル・ゲイツは政治・経済・科学のあらゆる側面から分析を進めてきた.10年の調査が結実し,パンデミックをも予期した著者の描く未来像が明らかに.20年ぶりの著作.
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本書は,マイクロソフト社の共同創業者で,世界最大の慈善基金団体であるビル&メリンダ・ゲイツ財団の共同創業者でもあるビル・ゲイツが一般向けに書いたものです.彼はエンジニアとして「問題を技術で解決する」ことに前半生を傾けてきました.いや「カネの力」や「数の力」で解決してきたことも随分あったようには思いますが,少なくとも本人はそのように言っています.そんな彼が「気候変動という問題」を解決する技術について語っています.個人で出来ることにも1章を割いているので,参考になさってみてはいかがでしょうか.

おすすめTEDトーク

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高名なSF作家のキム・スタンリー・ロビンスンが,50年後の未来の視点から,人類がどのようにして気候変動の危機を終わらせ,地球の生物圏に与えたダメージを回復させたかという「歴史」を語ります.私たちはどのように団結すれば今直面している最大の課題を乗り越えられるのか,そのビジョンが力強く語られます.
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2071年から2021年を振り返るという,興味深いトークです.人類は2020年代を襲ったパンデミックに対して,一致団結して立ち向かいました.その後,人類は再び一致団結して,気候変動に立ち向かったそうです.その結果,どんな50年を人類が迎えたのか,ぜひ聞いてみてください.

Q&A

匿名質問サイト「マシュマロ」および質問サイト「Quora」で質問を受け付けています.普段はツイッターでお返事を書いていますが「ニュースレター読んでます」と入れていただければ,こちらのニュースレターでより長めの回答を書かせていただきます.

今週はこちらの質問から.

文科省が球団経営をしたらどうなりますか?
Quora

2軍は「無駄」だから廃止します.(トップ大学以外は予算をカットします.)

「合理化」のためショートはセカンドに統合し,レフトとライトは廃止します.(大学の教員を減らします.)

勝てる試合だけ開催しろと現場に圧力をかけます.(研究資金はすべて競争的資金に振り分け「成功しそう」な研究にだけお金を出します.)

その上で「なぜメジャー球団に勝てないんだ」「現場の努力が足りない」とぼやきます.

…そりゃあ,頭脳流出もしますよね.

このレターの最後に匿名質問サイトへのリンクを貼っています.質問お待ちしております.

先週,真鍋淑郎先生のインタビューの文字起こしをこのニュースレターでもご紹介させていただきましたが,このインタビューは世界の研究者の間でかなり話題になっていたようです.ということはですね,世界の研究者が今後日本に行こうかなと思っても「いや,日本は同調圧力が強いらしい,行くのをやめておこう」となるわけですよ.もうこうなると,頭脳流出どころではありません.真鍋先生に見切りをつけられるとは,返す返すも,日本政府は惜しいことをしました.

こうなっては悪あがきですが,英語版STEAM NEWSやSNSで少しでも日本の研究環境のリアルを発信していこうと思います.(逆効果だったりして…)

さて,自然現象のコンピュータシミュレーションの話を聞くたびに,僕は祖母の話を思い出します.

僕が大学生だった頃,コンピュータシミュレーションによって初めて津波の中の水流が明らかになったという解説論文を読んだことがあります.津波の中では海底へ叩きつけるような水流があるそうですね.

実は僕は祖母から聞いて知っていました.

彼女はなんと,若い頃何度も津波に飛び込んでいたのです.遊びで.津波に飛び込むと,海底に叩きつけられるそうなのですが,それが面白かったそうです.

無茶苦茶やがな…

そう言えば僕が中学生の頃はまだ大雑把な時代で,台風が来ても海で遠泳をさせられていました.遠泳中に海上保安庁の巡視船がやってきたので中止になるかなと思ったら,なんと伴走してくれました.

祖母の気性を受け継いだのか,中学生の頃の体験が後を引いているのか,いまだに海へ海へと吸い寄せられて,ついに出島の対岸まで引っ越してしまいました.長崎港には大きな波が来ないのですが,干満の差が大潮の日だと3メートル近くあり,満潮の時間帯はうきうきしちゃいます.僕のインスタグラムには海の写真をよく投稿しているので,ご笑覧ください.

台風が来ると防波堤を見に行くお爺ちゃんの話を時々ニュースで聞きますが,気持ちはわかります.血が騒ぐんですよね…

今週なのですが,河江肖剰先生のYouTube番組の冒頭で僕の写真を使っていただけました.

また僕自身のラジオ番組「李白の愛したサイエンス」の月1回の収録も今週しました.今回も,すニャらしいゲストをお招きしております.ポッドキャストでもお聴きいただけますので,ぜひお楽しみになさってください.

今週も最後までお読みいただきありがとうございます.メールでお読み頂いた皆様は,よろしければボタンを押して行ってくださいませ.(ボタンは匿名化されています.集計したデータはこのニュースレターの内容改善以外には用いません.)

ここに配置されたボタンは、ニュースレター上でのみ押すことができます。

では,また来週,お目にかかりましょう.

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TEDxSaikaiファウンダー・パイナップルコンピュータ代表・長崎大学情報データ科学部教授

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