ヘイル・メアリー【第278号】

一か八か(ヘイル・メアリー)の名の下で,科学は「観測→仮説→実験」を回し続け,技術との協働が命をつなぎます.そして歌が映画を完成させます.宇宙の孤独に立ち向かうハードSFの快感を味わえる映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を紹介します.
いち 2026.04.03
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いちです,おはようございます.

プロジェクト・ヘイル・メアリー

プロジェクト・ヘイル・メアリー

映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー(Project Hail Mary)」を観てきました.まだの方は,ぜひ観るべきです.もしまだ予告編を観ていないのなら,幸運に感謝してそのまま劇場へ行くべき作品です.

ヘイル・メアリー(Hail Mary)とはラテン語の「アヴェ・マリア(Ave Maria)」の英語訳で「一(いち)か八(ばち)か」の意味でも使われます.日本語の「神頼み」に通じますね.

今号は映画「プロジェクト・ヘイル・メアリー」および同名の原作小説に関する話題を中心にお届けします.前半は未観賞の方でも読めるようにしていますが,「技術者ロッキー」の節では科学者と技術者の協力の具体的な成り立ちに触れますし「指導者エヴァ・ストラット」の節では彼女の役職と劇中の歌に触れるため,いずれも軽いネタバレを含みます.

というわけで,今週もどうぞ♪

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《目次》

  • 科学者グレース

  • 技術者ロッキー

  • 指導者エヴァ・ストラット

  • 今週の書籍

  • 今週のTEDトーク

  • Q&A

  • 一伍一什のはなし

科学者グレース

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」は,主人公グレースが真っ白な部屋のベッドで目を覚ますところから始まります.目を覚ましたグレースは「ここはどこ? わたしはだれ?」状態です.

原著の方では,自分の名前も思い出せないまま「頭上に見えているあのハッチ,ここから10フィートぐらいか……あれ,いまぼくヤード・ポンド法使った?……てことは,ぼくはアメリカ人か??」というグレースの頭の良さをチラ見せするシーンが続きます.いや,アメリカ人作者の自虐ギャグかもしれません.

その後繰り返されるのは,少しずつ戻ってくる記憶のほかに,彼自身が繰り返す「観測→仮説→実験」の繰り返しです.これは原作者を同じくする映画「オデッセイ」原作「火星の人」)でも繰り返されていましたし,科学全体の仕組みでもあります.

たとえば天文学では,天体の運行が観測され(本誌「火星の人」),天体同士が引き合っているのではないかという仮説が立てられ(本誌「人類史上最高の科学者アイザック・ニュートン」),それを確かめる実験が行われました.

「プロジェクト・ヘイル・メアリー」はタイトルこそ「一か八か」ですが,しっかりと科学の「お作法」を踏まえているので,科学教育にも良い映画かもしれません.映画のテーマでもありますしね.

技術者ロッキー

(※この節は,登場人物二人の協力の「仕組み」に触れるため,未観賞・未読の方は読み飛ばし推奨です.)

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続きは、3914文字あります。
  • 指導者エヴァ・ストラット
  • 今週の書籍
  • 今週のTEDトーク
  • Q&A
  • 一伍一什のはなし

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