【新年号】クリスマスとお正月とエピファニー

なぜクリスマスとお正月は一緒にやってくるの?
金谷一朗(いち)
2021.01.01
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いちです,おはようございます.クリスマスが終わるとお正月ですね.どうしてこう,連続してやってくるのでしょう?日本ではあまり馴染みがありませんが,1月6日はエピファニーというお祝いがあります.そうそう,僕の誕生日でもあります.いえ,誕生日はどうでもいいのですが,クリスマスとお正月,そしてエピファニーが近いのは理由があるのです.というより,もともと同じ日だったのです.

意外に思われるかもしれませんが,イエス・キリストことナザレのイエスの誕生日は知られていません.ではクリスマスのお祝いは何かと言うと,イエス・キリストの「誕生を祝う」日であって,「誕生日を祝う」日ではないのです.実際,新約聖書からイエス・キリストの誕生日を読み解くことは出来ません.またクリスマスのお祝いに関する現存最古の記録は4世紀のもので,イエス生誕から300年以上後ということになります.

では12月25日は何もない日だったのでしょうか?

いいえ,12月25日はお祭りの日でした.この日は,ローマ暦で冬至の日だったのです.冬至は1年で一番昼の長さが短い日です.ということは,この日を境に昼の長さが伸びていくので,めでたいわけですね.

冬至に1年が始まる

Photo by Greg Rakozy on Unsplash
Photo by Greg Rakozy on Unsplash

古代の文明では,元々冬至を1年の始まりにしていたようです.少なくとも1年のうちのどの日が冬至なのかを割り出していた証拠は多数見つかります.

いつも決まった場所から日の出または日の入りを見ていると,太陽が昇るあるいは沈む場所が季節ごとに少しずつ変わることに気づくでしょう.夏を過ぎた頃から太陽はだんだんと北側から昇り沈みするようになり,ある日に到達点へと達します.その日が冬至で,1日の長さが1年で一番短い日となります.そして,ある年の冬至からおよそ366日目に再び冬至がやってきます.

古代エジプト人たちはどうも別の天文現象を使って1年の長さを割り出していたようです.古代エジプト人たちは恒星シリウスが日の出とともに現れること,すなわち「ヒライアカル・ライジング」を1年の基準点に選んでいました.毎年,その日からおよそ70日後にナイル川が氾濫したと言うのです.川の氾濫前に収穫を終えておかないといけませんから,カレンダーは古代エジプト人にとってかけがえのないものでした.

僕が子供の頃,この古代エジプト文明の話を聞いたときは,そんな洪水の多い土地になんで人が住んだのだろうと思ったものです.水田の多い日本では思いつきにくいことですが,農業というのは,土地から栄養分を吸い上げる一種の採掘ですから,毎年新しい土が補給されるエジプトのナイル川流域は農業にうってつけの場所だったのですね.

もっとも60進法が大好きだった古代エジプト人たち,1年が360日「以上」あることに納得がいっていなかったようで,1年の始まりから360日をカウントしたら,残り5日間はお祭りということにしていたようです.日本も古代エジプトを見習いたいところです.

冬至のお祭りからクリスマスへ

古代エジプト人たちよりもずっと後の時代で,なおかつ北の方に住んでいた古代ローマ人たちは,雪解けのシーズン,いまの3月を年の始まりに選んでいました.おそらく,戦争を始めるのに都合が良かったのでしょう.その証拠が月の名前にも残っています.

  • マルティウス:戦と農耕の神マルスの月(3月,英語名はマーチ)
  • アプリーリス:愛と美と性の神アプロディーテ(ギリシア神話)の月(4月,英語名はエイプリル)
  • マーイウス:豊穣の神マイアの月(5月,英語名はメイ)
  • ユーニウス:結婚と出産の神ユノーの月(6月,英語名はジューン)
  • クィーンティーリス:第5の月(7月)
  • セクスティーリス:第6の月(8月)
  • セプテンベル:第7の月(9月,英語名はセプテンバー)
  • オクトーベル:第8の月(10月,英語名はオクトーバー)
  • ノウェンベル:第9の月(11月,英語名はノーベンバー)
  • デケンベル:第10の月(12月,英語名はディセンバー)

なんかツッコミどころがありそうなカレンダーですが,その前に古代ローマ人たちの気持ちを考えてみましょう.

  • 3月(第1の月):雪解け!戦争するぞー!マルスの御加護を!(初代王ロムルスは戦争と冒険によってローマを建国した)
  • 4月(第2の月):草花が芽吹いてきたよ.アプロディーテありがとう.(ローマ人が話していたラテン語のアペリオには「開く」という意味もある)
  • 5月(第3の月):果物が実り始めたよ.マイアありがとう.
  • 6月(第4の月):出産のシーズンだよ.ユノーの御加護を!(夏の終わり,つまり人間の発情期から約40週目)

そして,残る7月(第5の月)〜12月(第10の月)は番号で呼んでいたんですね.で,12月の先,現代の1月と2月はどうなっていたのでしょうか.古代ローマ人のカレンダーには出てきません.どうやら「無かったこと」になっていたようですね.日本も古代ローマを…いや2ヶ月もスキップするのはまずいでしょうか.

紀元前2世紀ごろには,古代ローマ人たちも1月と2月を追加します.そして1月を1年の始まりにします.1月は物事の初めと終わりを司る境界(扉)と時間の神ヤヌスの月(ヤーヌアーリウス,英語名ジャニュアリー),2月は浄罪と贖罪の神フェブルスの月(フェブルアーリウス,英語名フェブラリー)になりました.

リオネル・ロワイエ「カエサルの足元に武器を投げ出すウェルキンゲトリクス」(1899)
リオネル・ロワイエ「カエサルの足元に武器を投げ出すウェルキンゲトリクス」(1899)

その後,共和政ローマ最後の独裁官で紀元前1世紀のひと,ガイウス・ユリウス・カエサルの誕生日にちなんで7月をユリウスの月(英語名ジュライ)と,ローマ元老院によって名付けられました.カエサルはまたカレンダーを整備して4年に1度うるう年になることも決めました.彼の制定したユリウス暦は紀元後1582年10月4日まで使われます.

7月に続く8月も,カエサルの後継者で帝政ローマ最初の皇帝であるアウグストゥス(ガイウス・ユリウス・カエサル・オクタウィアヌス)にちなんでアウグストゥスの月(英語名オーガスト)と名付けられました.これも紀元前1世紀の出来事です.

ユリウス暦が出来た頃の古代ローマ人は冬至の日を知っていたようで,その日にはお祭りをしていました.その後キリスト教が生まれ,紀元4世紀にはクリスマスのお祝いをする習慣が生まれたようです.どうもこのとき,冬至のお祭りがそのままクリスマスになったようです.その後,公会議で12月25日がクリスマスと正式に認定されました.

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