火星に落ちていく月【第306号】

火星の衛星フォボスは,1877年に妻の励ましを受けた天文学者に発見されました.一時はカール・セーガンも関わった「人工物説」まで飛び出しましたが,いま日本の探査機MMXが,その正体と起源を確かめるために火星へ向かっています.
いち 2026.10.23
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H3ロケット10号機の打ち上げ(Kyodo News)

H3ロケット10号機の打ち上げ(Kyodo News)

2026年10月20日未明,火星衛星探査機MMXがH3ロケット10号機で種子島宇宙センターから打ち上げられました.ロケットは計画どおり飛行し,探査機は所定の軌道に投入されました.行き先は,火星の衛星フォボスです.

フォボスは直径20キロメートルあまりの小さな天体です.それでも,発見の物語,人工物ではないかと疑われた物語,そして起源をめぐる未解決の問題を,たっぷり抱えています.今週は,MMXが向かうこの「恐怖という名の月」をご紹介します.

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《目次》

  • あきらめかけた発見

  • 火星の空を西から昇る月

  • 空っぽの衛星という計算

  • 探査機が見た岩のかたまり

  • 起源はまだ決着していません

  • MMX,フォボスを拾いに行く

  • 今週の書籍

  • 今週のTEDトーク

  • Q&A

  • 一伍一什のはなし

あきらめかけた発見

火星に衛星があるはずだ,という予想は古くからありました.天文学者ヨハネス・ケプラーは,地球には月が一つ,木星には衛星が四つあるのだから,間にある火星には二つあるだろうと考えました.ジョナサン・スウィフトは1726年の「ガリヴァー旅行記」に,火星の二つの衛星を登場させています.もちろん,どちらも観測に基づくものではありませんでした.

フォボス

フォボス

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続きは、6133文字あります。
  • 火星の空を西から昇る月
  • 空っぽの衛星という計算
  • 探査機が見た岩のかたまり
  • 起源はまだ決着していません
  • MMX,フォボスを拾いに行く
  • 今週の書籍
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