姿を消す技術【第308号】

軍服のまだら模様から,文学の透明マント,現地の枝葉,そして『攻殻機動隊』の光学迷彩まで.「姿を消す」技術の歴史をたどります.スウェーデン軍の幾何学迷彩には,モダンデザインの匂いもあります.
いち 2026.11.06
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いちです,おはようございます.

今週は「迷彩」についてお届けします.写真はウクライナ軍がテストしている,女性用迷彩ボディ・アーマーです.

On Ukraine's front lines, female soldiers testing Canadian-designed body armour (Radio Canada)

On Ukraine's front lines, female soldiers testing Canadian-designed body armour (Radio Canada)

迷彩と聞いて思い浮かぶのは,写真のような緑と茶色のまだら模様かもしれません.でも迷彩の本質は「模様」そのものではなく,見る側の知覚をずらすことにあります.背景に溶ける.輪郭を壊す,別のものに見せる,やり方はいくつもあるのに,目的はいつも同じです.そこにいるのに,いないように見えること.

今週は,その技術を歴史と物語とフィクションのあいだでたどります.途中で,スウェーデン軍の幾何学迷彩にも立ち寄りましょう.あの鋭い三角形のならびには,軍事研究だけでなく,モダンデザインの感覚が透けて見えます.

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《目次》

  • 画家たちが戦場に呼ばれた日

  • スウェーデンの「葉っぱの山」とモダンデザイン

  • 文学と,透明マント

  • 現地の枝をまとう

  • 『攻殻機動隊』と光学迷彩

  • 今週の書籍

  • 今週のTEDトーク

  • Q&A

  • 一伍一什のはなし

(Cover Photo by Specna Arms on Unsplash)

画家たちが戦場に呼ばれた日

近代以前の軍服は,むしろ目立つことが仕事でした.敵味方の識別,士気,身分の誇示など「隠れる」より「見える」ことが優先だったのです.ところが銃の射程が伸び,空からの偵察が当たり前になると,事情が変わります.目立つことは,一方的に撃たれることを意味しはじめました.

そこで軍服や装備に「隠れる」機能が求められるようになったのです.「迷彩」という発想の始まりです.

Plan of dummy tree observation post (セヴォラがデザインした,木に見せかけた監視哨のスケッチ)

Plan of dummy tree observation post (セヴォラがデザインした,木に見せかけた監視哨のスケッチ)

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続きは、6091文字あります。
  • スウェーデンの「葉っぱの山」とモダンデザイン
  • 文学と,透明マント
  • 現地の枝をまとう
  • 「攻殻機動隊」と光学迷彩
  • 今週の書籍
  • 今週のTEDトーク
  • Q&A
  • 一伍一什のはなし

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