21世紀最初の25年のブレイクスルーと「もしかしたら」の大発見【第265号】
いちです,おはようございます.
ナショナルジオグラフィック日本版が「過去25年間で最も偉大な科学のブレイクスルー」の「物理学・天文学編」と「生命科学編」そして「地学・考古学編」を今週公開しました.同記事は以下のブレイクスルーをピックアップしています.
物理学・天文学編
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グラフェンの発明
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ヒッグス粒子の発見
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重力波を初めて検出
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核融合で正味エネルギーの獲得に成功
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初の恒星間天体の発見
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ブラックホールの撮影
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探査機が太陽系最遠部に到達
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宇宙最古の姿
生命科学編
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ヒトゲノム計画の完了と合成生命の誕生
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CRISPRの発見と開発
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3人の親を持つ子ども
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多くの命を救うワクチン
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CAR-T細胞療法
地学・考古学編
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異常気象と気候変動の関連性が明確になる
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深海で見つかった奇妙な生命の宝庫
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LiDARで考古学的発見が相次ぐ
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極地の海で1世紀以上前の沈没船をついに発見
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古人類の化石とDNAが続々と
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恐竜に羽毛が生えていた
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永久凍土から見つかった氷河期のミイラ
いずれも興味深いですね.
本稿執筆時点ではまだ翻訳されていませんが,ナショナルジオグラフィック英語版のほうには「もしかしたら(Big if true)編」が掲載されています.この「もしかしたら編」に紹介されているテーマは以下のとおりです.
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A possible ninth planet in the solar system(第9惑星発見)
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Google claims quantum supremacy(Googleが量子超越性を達成)
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Dark energy may not be a constant(ダークエネルギーは一定ではない)
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New treatments and preventions for neurological disorders(神経疾患の新しい治療法と予防法)
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Possible biosignatures discovered on Mars, Venus, and exoplanets(火星,金星,太陽系外惑星に生命の兆候)
「もしかしたら編」は,もしも正しかったとしたら,21世紀最初の四半世紀だけでなく,21世紀最大の発見として記憶されても不思議ではない内容が並んでいます.ひとつめに挙げられている「第9惑星」は「水金地火木土天海冥」の「冥王星」のことのようにも見えますが,2006年以降は地球の月よりも小さい冥王星を太陽系の惑星にカウントしないことになりましたので,第9惑星は冥王星ではありません.そうではなくて,冥王星よりも遠くに地球よりも大きな惑星があるかもしれないということを,天文学者たちは疑っているのです.もし第9惑星が存在したら,太陽系の大事件と言えるでしょう.
このような「Big if(もしかしたら)」も含めて「もしかしたら編」の中でとりわけ大きな発見になりそうなのは,きっと「Dark energy may not be a constant(ダークエネルギーは一定ではない)」ではないでしょうか.他のトピックも今後ときどき取り上げていこうと思いますが,2025年の最後の配信はこの「ダークエネルギーは一定ではない(かもしれない)」についてお届けします.
ダークエネルギー発見の契機となった超新星SN 1994D(矢印)
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(Cover Photo by Arnaud Mariat on Unsplash)
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