【第11号】地図デザイナのしごと

あまりにも美しく普遍的だったメルカトルの地図に隠された偏見とは?
金谷一朗(いち) 2021.03.05
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いちです,おはようございます.

今日は3月5日.16世紀ネーデルランド・フランドル伯領(現ベルギー)のゲラルドゥス・メルカトル(出生名ゲラルト・デ・クレメル)の誕生日です.誰それ?

皆さんはほとんどいつも,メルカトルの発明のお世話になっています.彼は,現代の地図でよく用いられている「メルカトル図法」の考案者なのです.(メルカトル以前にドイツのエアハルト・エッツラウプが発案していたようなのですが,発表はメルカトルが先でした.)

ご存知の通り,地球は球体です.もちろん地球には山や海があるため凸凹していますし,赤道面がわずかに(1/300ほど)膨らんでいますが,世界地図を考える上ではまんまるな球と考えて良いのです.

問題は,球を平面に「広げる」ことができないことでした.地図は平面でないと不便です.球だと置き場所を取りますし,複製もしづらいですし,書き込みもしにくいです.また拡大したり縮小したりも大変に難しい.だいいち,街レベルでは地球は十分に大きいので,街の地図は平面で全く問題がないのです.なんとか球の地図を平面にすることは出来ないでしょうか.

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