危険だと思うことがキケンな化学物質『DHMO』【第144号】
2️⃣科学者は科学的根拠がすべてだと思わないようにしましょう
3️⃣科学的には「肉より魚の方が安全」という主張だってできます
いちです,おはようございます.
皆さんは「ジ・ヒドロゲン・モノ・オキシド(DHMO)」という化学物質のことを聞いたことがあるでしょうか?
財団法人食品分析開発センターによると,DHMOは以下の性質を持っています.
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DHMOはヒドロキシ酸の一種であり,無色,無味,無臭である.
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DHMOは比較的古くから工業に使用されてきたが,産業の巨大化や軍事技術の発展に歩調をあわせて使用量が飛躍的に増加した.
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DHMOは,ナトリウム,カリウム,カルシウムなどの金属を侵し,水素ガスを発生させる.
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DHMOは毎年無数の人を死に至らしめ,その多くはこの物質を液体のまま吸引したことによる呼吸不全が死因である.
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固体となったDHMOに接触すると,身体組織に激しい損傷を引き起こすことが実験的に確かめられている.
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DHMOは,不妊男性の精液,死亡した胎児の羊水,がん細胞から多量に検出される.
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DHMOは犯罪者の血液や尿に多量に含まれ,暴力的犯罪のほぼ100パーセントがこの物質を摂取した後24時間以内に起こっている.
以上の性質にもかかわらず,DHMOは食品に無制限に添加することが認められています.
いいんでしょうか?
読者の皆様の中には,すでにオチをご存じの方もいらっしゃるかもしれません.ジ・ヒドロゲン・モノ・オキシド(DHMO)とは「一酸化二水素(H₂O)」つまり「水」のことです.

Photo by Daniel Sinoca on Unsplash
上記の性質は科学的にはまったく妥当な主張です.それでも,この主張だけ読むと「なんて危険な物質なんだろう」と思いませんか? 実際,米国カリフォルニア州オレンジ郡のアリソ・ビエホ市ではDHMO規制の条例が採択寸前までいきました.
僕は弱小,いや底辺ではあるものの科学者であり,社会活動家(Social Activist)であろうと心がけていますから,社会に対して「扇情的な情報に気をつけてください,科学的根拠に目を向けてください」と伝える立場にあります.しかし,こちらでご紹介したDHMOに関する話題は科学的にまったく妥当な主張だけを並べたものです.つまり,都合良く選ばれた科学的根拠に目を向けるだけでは不十分なのです.科学的根拠も使いようによってはプロパガンダにもなり得ることも,意識しなければならないのです.
今週はそんなお話をお届けいたします.
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《目次》
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DHMOジョークが教えてくれること
-
ココナッツによる死
-
ALPS処理水と科学的根拠
-
今週の書籍
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今週のTEDトーク
-
Q&A
-
一伍一什のはなし
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