【第4号】国境線の測量から見つかった美の本質

スペインとポルトガルの国境の長さが違う?我々を「美の本質」へと導いた謎
金谷一朗(いち)
2021.01.15
読者限定

いちです,おはようございます.

明日から大学入学共通テストが始まります.僕たちは壱岐の試験会場に来ています.受験生の皆さん,どうか落ち着いて受験してください.電車が遅れたとか,極端な話,道中で痴漢にあったとか「自分のせいじゃない」遅刻の場合は必ず救済措置が取られ,正規の試験時間が確保されますので,焦らず試験会場へ連絡してください.お身内に受験生がいらっしゃる皆さん,受験シーズンはまだ続きますが,いましばらくご協力をお願いいたします.

また今年はコロナ禍の中での試験実施ということで,第2日程も組まれています.体調不良の場合は,当日でも第2日程への振替が可能です.また受験途中からの振替も可能です.受験案内をよくお読みの上,ご判断下さい.もし試験会場で体調不良になった場合は,たとえ試験中であっても遠慮なく試験監督に申し出て下さい.

今週は雪が積もった地域も多かったようですね.というわけで,今週は雪の結晶にまつわるお話をしたいと思います.

雪の結晶

Alexey Kljatov, CC BY-SA 4.0
Alexey Kljatov, CC BY-SA 4.0

写真のような雪の結晶のことを雪片(せっぺん)と言います.雪片の形は80種類にも分類されるそうですが,有名なのは「雪印」で有名な6方向に結晶が伸びた形でしょう.また雪片を表現する「文字」も世界的な文字コード規格であるUnicodeで決められています.欧米ではクリスマスを意味するシンボルとしても使われるようですね.

実は,ある意外な研究と,この雪片の形とが結びついています.

国境線の長さが違う!

スペインとポルトガルは国境を接した国同士です.20世紀初頭,両国はそれぞれ国境線の長さを測量しました.その結果,スペイン側の測量は987km,ポルトガル側の測量は1,214kmでした.なぜ同じ国境線を測量したのに,大幅に異なる結果になったのでしょうか.実はこのような食い違いは珍しいことではなく,同じく国境を接しているオランダとベルギーでは国境線の長さをそれぞれ380kmと449kmとしていました.この食い違いは,イギリス人気象学者のルイス・フライ・リチャードソンによって調査されました.

リチャードソンの主張はこうです.国境線や海岸線の長さは,細かく測量すればするほど長くなる.これは我々の直観に反するので「海岸線のパラドックス」と言います.例えば,イギリスを構成するグレートブリテン島の海岸線を100km単位で測ると約2,800kmですが,50km単位で測ると約3,400kmとなります.この問題を精緻に考え直したフランス人数学者ブロワ・マンデルブロは1967年に「イギリスの海岸線の長さはどのくらいか?」という論文を書きました.この論文は「フラクタル幾何学」の始まりでもありました.

マンデルブロは,境界線が無限の長さになる図形の一つであるフラクタル図形を考え出しました.厳密に言えば,国境線や海岸線はフラクタル図形ではありません.しかし,フラクタル図形に近いので,測量の細かさによって長さが変わってしまっていたのでした.

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