【第8号】オリオン座の物語
いちです,おはようございます.
そう言えば,映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版𝄇」が公開延期になってしまいましたね.いつ頃見られるのでしょうか.僕は「エヴァ」TV版(1995年〜1996年)放映当時は友人に勧められても全く見なかったのですが,10年ぐらい前に突然はまりました.ええ,最悪なタイミングです.
さてさて,冬は星空が一年で一番美しい季節です.今週は少し柔らかく,冬の星座にまつわるお話をしてみたいと思います.

オリオン座
冬の星座と言えば,まずは「オリオン座」でしょう.オリオン座を構成する明るい星,左上の「ベテルギウス」とと右下の「リゲル」,中央に並んだ「三つ星」は配置が美しく,全天の中でも特に目立つため,古代からひとつの星座として認識されていたようです.

多くの文明で星座は神話と結び付けられてきました.我々がオリオン座と呼ぶのは,この星々がギリシア神話に登場する美青年オリオンと結び付けられているからです.
美青年オリオン
ギリシア神話に,狩人オリオンは登場します.彼は海の神ポセイドンと,女神エウリュアレの子とされています.エウリュアレは結婚当初は美人だったそうですが,妹の女神メドゥーサが醜い姿に変えられたことを知恵と芸術の女神アテネに抗議したときに,とばっちりで自身も変身させられてしまいました.メドゥーサが変身させられたのは女神アテネの宮殿でポセイドンと事に及んだためと言われています.ポセイドンもしっかりしろと言いたいところですが,メドゥーサとポセイドンの間には双子の息子ペガスス,クリュサオルがいます.さすがギリシアの神様たち,泥沼です.
そのメドゥーサは勇者ペルセウスに殺されています.醜い姿にされ,殺されるとはあんまりな人生ですね.ペルセウスは「翼のあるサンダル」で空を飛び,メドゥーサを見つけ出して首を切り落とし,その首をアテネのもとへと持ち帰ります.このとき砂漠に滴り落ちたメドゥーサの血がサソリになったと言われています.(ヘビとする説もあります.)翼のあるサンダルは,伝令の神ヘルメスから借りたものだそうです.
さて,このオリオンは美青年だったそうなのですが,恋愛ではかなり苦労したようです.最初の妻シーデーは美人でしたが高慢で「私は女神ヘラ(全知全能の神ゼウスの妻)よりも美しい」と言い放ち,ヘラによって冥府へと落とされます.
妻を失ったオリオンは旅へ出るのですが,そこでキオス島の王オイノピオンの娘メロペに一目惚れします.オイノピオンから結婚の許しをもらえなかったオリオンは,力づくにメロペを犯します.怒ったお父さんオイノピオンは,オイノピオンのお父さん,酒の神ディオニュソスに頼んでオリオンを酔い潰し,オリオンの目をえぐって海に捨てます.
話はそれますが,ディオニュソス神は古代ギリシアの神々の中で,僕が一番惹かれる神様です.後に古代ローマ人たちが古代ギリシアの神々を自分たちの神々へと「翻訳」していったときに,ディオニュソスはローマの「バックス」という神様に翻訳されました.ロッテのチョコレート「バッカス」はローマの「バックス」の英語読みです.こんなところにも古代ギリシアの神様の影響があって面白いですね.
オリオンに話を戻します.盲目のままリムノス島にたどり着いたオリオンに,暁の女神エオスが恋をします.「捨てる神あれば拾う神あり」とはこの事でしょう.

女神エオスは兄の太陽神ヘリオスに頼んで,オリオンの目を治癒してもらいます.
恋多きオリオン
女神エオスと交際を始めたオリオンですが,なんと交際中に7姉妹プレイアデスに恋をします.7人同時にです.神話とは言え,なかなかのクズっぷりですね.
一方で,エオスのほうはオリオンにベタぼれだったようで,自身の仕事は夜明けを告げることだったのですが,さっさと自分の仕事を終わらせてオリオンに会うようになります.こうなると夜明けの時刻がめちゃくちゃになってしまいます.不審に思った狩りの女神アルテミスが原因を調べるためにエオスの宮殿を訪れます.
そして,まあご想像の通り,オリオンとアルテミスは恋に落ちます.アルテミスは処女神でもあるので,恋は許されなかったにもかかわらず.
アルテミスの兄,芸術の神アポロンは妹の恋を快く思わず,一計を案じます.オリオンの元にサソリを放ち,オリオンが海へと逃げ出すのを見届けます.オリオンは海の神ポセイドンの子だけあって,海の中も歩けたのでしょう.また巨体でもあったので,海面から頭だけが出ていました.
アポロンは妹アルテミスに「お前がいくら弓の達人でも,遠くに見えるあの光(実際はオリオンの頭)を射抜くことは出来まい」と挑発します.アルテミスはつい弓を引いてしまい,恋人オリオンを自らの手で殺してしまいました.
浜辺に打ち寄せられたオリオンの死体を見つけたアルテミスは嘆き悲しみ,父であるゼウスに星座にしてもらいました.
現代でも,東の空にサソリ座が昇る少し前に,オリオン座は西へ沈み姿を隠します.
エオスのその後
オリオンの神話はだいたいこのあたりで終わるのですが,気になりませんか?オリオンに捨てられたエオスのその後が.
前後関係ははっきりしませんが,エオスは美男子ティトノスを熱愛し,ゼウスにお願いしてティトノスに永遠の命を授けてもらっています.このとき,ついでに「不老」をお願いするのを忘れていたため,ティトノスは年老いていき,ついにはエオスによってセミの姿に変えられてしまったそうです.エオスは老いたティトノスとも声だけのお付き合いはしたそうなので,セミの鳴き声はひょっとしたらティトノスの声なのかもしれません.
このティトノスとエオスの子が「トロイア戦争」に登場するエチオピア王メムノンです.(当時のエチオピアという地名は,現在のエチオピアとは異なるという説もあります.)メムノンは英雄アキレウスと互角に渡り合ったのですが,最後は殺されてしまいました.エジプトには「メムノンの巨像」が残されています.
プレイアデス7姉妹
オリオンが恋をしたプレイアデス7姉妹のほうは,誰一人オリオンとはお付き合いをしませんでした.7姉妹の長女マイアは大神ゼウスとの間にヘルメスを産んでいますから,オリオンよりは世代が上になるのでしょうね.マイアの妹たち,エレクトラ,タユゲテもゼウスとの間に子をなしています.アルキュオネ,ケライノはポセイドンとの間に子をなしました.ステロペは軍神アレスとの間に子を産んでいます.一番下の妹メロペ(オイノピオンの娘とは別人)だけが人間シーシュポスと結婚しました.
プレイアデス7姉妹は,ゼウスの力によって星になりました.オリオン座の右肩方向にあるプレイアデス星団です.天空の上では,オリオンがプレイアデス姉妹を追いかけるように移動していきます.このオリオンのプレイアデス姉妹への永遠の(叶わぬ)恋ですが,最新の天文学によると,少し事情が違うようです.ニュースレター後半でまたご紹介しますので,どうかもう少しお付き合いください.
オリオンとプレイアデスについて,古代ギリシアの詩人ヘシオドスは次のような詩を詠んでいます.
そしてもし嵐の海を渡ろうという望みが汝を捕らえたとしてもプレイアデスが強大なオリオンを避け
深い霧の奥に潜り
激しい風が荒れ狂うなら
汝の船を暗紅色の海に出してはならぬ
しかし我が言のとおり忘れずに地を耕すのだ
これは,オリオン座がまだ昇らず,おうし座にあるプレイアデス星団が東の空に輝く夕方,つまり春先に「地を耕せ」とうたっていると解釈されています.もっとも,ギリシアでも日本でも,今頃のシーズン(2月)がちょうど夕方おうし座が昇る時期に当たります.この時期に地を耕して植えるとなると,古代ギリシア人も大好きだったタマネギでしょうかね.

そんなプレイアデス星団ですが,天文学では「メシエ45」と呼ばれています.日本名は「すばる」ですね.清少納言「枕草子」にも
星は、すばる。彦星。夕づつ。よばひ星、すこしをかし。尾だになからましかば、まいて。
とあります.「星はすばる,彦星,宵の明星が良い.流れ星も少し趣がある.尾を引かなければもっとよいのだけれど」とのことですね.流れ星の尾はお気に召さなかったようです.なお彦星はわし座の「アルタイル」という星のことで,織姫星(こと座の「ベガ」)と並んで夏を代表する星です.宵の明星は夕暮れ時に西の空に現れる金星のことです.
プレイアデス星団は天文学では「散開星団」に分類されています.散開星団とは,同じガスから生まれた,比較的「若い」星同士が近い位置にいる状態のことです.プレイアデス星団は地球からおよそ443光年の位置にあり,年齢はだいたい1億歳ぐらいで,大変ゆっくりと,オリオン座の方角へ動いています.我らの太陽の推測年齢が46億歳,推測寿命が109億歳ぐらいですから,プレイアデス星団は本当に若いのですね.
オリオン大星雲
オリオン座にも有名な天体があります.「メシエ42」とも呼ばれる「オリオン大星雲」です.オリオン座の三つ星を「オリオンのベルト」とすると,そのベルトにぶら下げられた短剣にあたる「小三つ星」の中央付近にオリオン大星雲はあります.

地球からはおよそ1,300光年の彼方にありますが,年齢は1万歳ほどと若い星雲だと見られています.オリオン大星雲の中では,今でも星が生まれつつあるようです.1万年前というと,日本は縄文時代にあたります.縄文人がオリオン大星雲の誕生を観た可能性もあるわけですね.一部の学者は,マヤ文明に残された神話に,オリオン大星雲の誕生を意味するものがあると主張しているようです.[参考文献1]
オリオン座の左上(右肩)にあるベテルギウスは,2019年から2020年にかけて急速に暗くなりました.一時期は,ベテルギウスが爆発(超新星爆発)して,星雲になるのではないかと騒がれました.しかし,その後の研究によって,ベテルギウスはまだ爆発しそうにないことがわかっています.[参考文献2]
星雲の誕生が歴史上目撃されたことは,少なくとも一度はあります.おうし座の「かに星雲」がそれで,1054年に同じ場所で超新星爆発が目撃されています.鎌倉時代の公家,藤原定家が書いた「明月記」の記述が日本では現存する最古の記録ですが,藤原定家の出生前であるため,過去の記録を転記したものと思われます.

「明月記」には1204年2月21日と2月23日に京都でオーロラを観たことも書かれています.京都でオーロラ?と思われるかもしれませんが,ありえないことではないと,僕は京都大学花山(かざん)天文台の柴田一成教授から伺ったことがあります.これは結構深刻な話で,太陽による磁気嵐が引き起こしたものと考えられているのですが,現代に同じような規模の磁気嵐が起こった場合は大惨事になる可能性も指摘されています.この話については,今週の「おすすめ書籍」で改めてお話させていただきます.
〈追記(2021-02-15): かに星雲の中にある「かにパルサー」を発見した女性天文学者ジョスリン・ベル・バーネルに,今年1月6日,イギリス王立天文台からゴールドメダルが送られました.[参考文献]〉
〈追記(2021-06-29): かに星雲の元になった超新星が大変珍しい「電子捕獲型超新星」である可能性が高くなったそうです.電子捕獲型超新星は1982年に天文学者野本憲一が提唱した新しい概念で,理論上予測されていたもののこれまで観測されていませんでした.かれは「かに星雲」を形成した超新星「SN1054」が電子捕獲型超新星 だったとする説を唱えていました.2018年3月2日,アマチュア天文家が新しい超新星「SN 2018zd」を発見,アマチュア天文家の野口敏秀によって発見直後から明るさの変化が詳しく観測されました.そして天文学者平松大地によって,超新星「SN 2018zd」が予測されていた「電子捕獲型超新星」であろうことが確認されました.このことから,電子捕獲型超新星の存在が現実であることが確実になってきました.[参考文献]〉
トロイア戦争とシュリーマン
詩人ヘシオドスのライバルでもあった詩人ホメロスは「イリアス」「オデュッセイア」という長大な叙事詩を残しています.「イリアス」は神話のトロイア戦争を描いたもので「オデュッセイア」はその続編です.
このトロイア戦争の発端となったのが「パリスの審判」と呼ばれる事件です.神々の宴会の中へ,争いの女神エリスがひとつの林檎を投げ込みました.その林檎には「最も美しい女神に」と書かれていたのです.この林檎を巡って,大神ゼウスの妻ヘラ,知恵と芸術の女神アテネ,愛と美の女神アプロディーテが争います.大神ゼウスは仲裁するために,トロイアの羊飼いパリスを審判に指名します.そこはゼウス,妻のヘラを選べよと突っ込みたくなるところですが,実はアテネもゼウス「自身が」産んだ愛娘なので甲乙つけがたし,しかもアプロディーテも「美」の女神とあって,選べなかったのでしょう.
突っ込みどころはここで終わりません.3人の女神はあの手この手でパリスを買収しようとし,結局アプロディーテが勝利します.彼女がパリスに贈ったのは,絶世の美女とうたわれた,スパルタ王の妻ヘレネでした.
あんた,人妻やがな…
というわけで,怒り狂ったスパルタ王とトロイア側との戦争が始まりました.我らがメムノンもエチオピア軍を率いて,トロイアの援軍に駆けつけます.トロイア戦争はその後神々も参戦した大戦争になり…という「お話」なのですが,ドイツの考古学者ハインリヒ・シュリーマンによる発掘によって,全くの神話でもない事がわかっています.神話が何かを伝えていたとすると,ひょっとすると,現在の出来事も数千年後には神話として語られているかもしれませんね.
「最も美しい女神に」という一文は英語では “To the fairest one” と訳されることがあるのですが,小説家アイザック・アシモフはこれを “To the barest one” (最もハゲた人へ)ともじった短編推理小説を残しています.(黒後家蜘蛛の会3)
おすすめTEDトーク

「我々はいつか死にますーそして詩はその事実を受け入れさせてくれるのです.」面白おかしいこのトークで,文芸評論家のステファン・バートは何篇かのお気に入りの詩と共に,私たちを言葉の旅へ誘います.はるばると改行まで,そして人間の想像への熱望を後押しします.
トークの中で,スティーブンは「詩は技術(テクニック)だ」と言います.テクニックの語源はギリシア語の「テクネ」.これがローマ人のラテン語に訳されて「アルス」となりました.アルスは英語の「アート」つまり芸術の語源です.
詩は「美」を触媒として,事実や感情を未来へと伝えるテクニックであり,アートなのですね.その証拠がホメロスの「イリアス」「オデュッセイア」なのかもしれません.
このトークは英語の詩を使って説明していますが,日本の万葉集もまた良い例でしょう.とても興味深いトークなので,是非御覧ください.
おすすめ書籍

藤原定家「明月記」に,1204年の冬に「京都でオーロラが見えた」という記述があります.これはフィクションではなく,本当にオーロラが見えた可能性があるのです.その原因として考えられるのが,太陽の活動,より具体的には「太陽フレア」と呼ばれる天体現象です.太陽フレアは,太陽表面で起こる巨大な爆発のことで,爆発とともに大量の電子や陽子が放出されると考えられています.その一部が地球まで届くことがあり,地球に「磁気嵐」という目に見えない嵐を引き起こします.
1859年には記録上最大の太陽フレアが発生しており,9月1日から2日にかけて巨大な磁気嵐が地球を襲っています.この日はハワイでもオーロラが観られたそうです.1989年に起こった磁気嵐では,カナダのケベック州で大停電が起こっています.
電力網,通信網がより高度に発展した現在,磁気嵐に襲われたらより大変なことになることは想像に難くありません.そのような事態を描いた作品が本作「赤いオーロラの街で」です.
なお,人工的に磁気嵐を発生させる兵器が研究されていまして,実は日本はその兵器の射程距離内にいます.もしご興味があれば僕のブログ記事をご参考にしていただければと思います.日本が攻撃を防御するために配備しているシステムの名前は,女神アテネの盾「アイギス」の英語読み「イージス」から来ています.
おすすめ映画

今週はおすすめ映画もご紹介しますね.ブラッド・ピット主演の「トロイ」.トロイア戦争を元にした映画なのですが,神話のトロイア戦争とは異なった視点で描かれています.神話と違う!ということで,評価しない人も多いそうなのですが,神話と同じく神々が参戦してしまうと映画の枠に絶対収まらないので,これはこれで良かったのかなと僕は思います.
Q&A
匿名質問サイト「マシュマロ」で質問を受け付けています.普段はツイッターでお返事を書いていますが「ニュースレター読んでます」と入れていただければ,こちらのニュースレターでより長めの回答を書かせていただきます.
今週頂いた質問はこちらです.
光が波ではなくて粒,振動ではなくて音符という表現が分かりやすかったです.いつも素敵な文章なのでおうかがいしたいのですが,言葉を選ぶときのコツや参考になる本やアートがありましたら教えて下さい!
お褒めの言葉をありがとうございます.
「理科系の作文技術」や「思考の整理学」のような基本とも言える教科書は読んだ上で,実践しているつもりなのですが,このニュースレターは理科系のレポートになりすぎないように気をつけています.僕の好みは作家のアイザック・アシモフやオスカー・ワイルドのような文体なのですが,道のりは長いですね…
Quoraという質問サイトにこんな投稿をしていますので,こちらも参考にしていただければ幸いです.
こちらの匿名質問サイトで質問を受け付けています.質問をお待ちしております.
https://marshmallow-qa.com/kanaya
ポッドキャストのお知らせ
今週も「振り返り」ポッドキャストを続けてみました.今週は【第7号】の振り返りをお届けしました.
それぞれポッドキャストプレイヤーでサブスクライブ(チャンネル登録)していただくと,自動的に最新エピソードが届きます.
Clubhouseも相変わらず続けています.アカウントは @kanayafrica です.よろしければフォローしてみてください.
あとがき
アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」はよく神話と比較されます.TV版のオープニング曲「残酷な天使のテーゼ」の歌詞に「少年よ,神話になれ」とあることも後押ししているのでしょう.設定やストーリーの複雑さのせいで「エヴァ」の物語は一度観ただけでは頭に入りません.(ですよね?)
古代ギリシアの神話もまた,大変複雑で,しかも複数の世界線があったりするので,全貌を理解するのは大変です.今週は狩人オリオンに焦点を当てて物語を紹介させていただきました.
古代ギリシアの神々は,後に古代ローマの神々と混ざり合って一体になっていきます.ギリシアのディオニュソスがローマのバックスに同一視された例は本文中でご紹介させていただきましたが,ギリシアの最高神ゼウスはローマの最高神ユピテル(英語名ジュピター)と同一視されています.彼の妻ヘラはローマの女神ユノー(ジュノー)になります.他に主だったメンバーで言うと,アテネはミネルウァ(ミネルバ)に,アルテミスはディアナ(ダイアナ)に,アプロディーテはウェヌス(ビーナス)になります.
何かと似ている古代ギリシア人と古代ローマ人ですが,神話に関しては少々お国柄が出ています.理屈好きのギリシア人は,すべてのことに理由を求めました.ゼウスはなぜ誕生したの?巨神クロノスから生まれたからさ.クロノスは誰の子?天空の神ウラノスさ.ウラノスはどのように生まれたの?大地の女神ガイアがひとりで産んだのさ.ガイアは…?カオス(混沌)から生まれたんだよ…と続きます.
合理的で現実的なローマ人は,莫大な数になる神様たちをいちいち祀るのが面倒だったのか「その他」という神様を作っています.またローマにはパンテオン(万神殿)という,すべての神を一気に祀る神殿を建ててもいます.ある意味,ローマ人たちがギリシア神話をローマ風にアレンジしていったのですね.
八百万の神々の神話を持つ日本では,どのように神話をアレンジしていくのでしょうか.
では,また次週にお目にかかりましょう.
参考文献
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Carrasco, David, ed. (2001): The Oxford Encyclopedia of Mesoamerican cultures: the civilizations of Mexico and Central America; Oxford Univ. Press. p. 165. ISBN 978-0-19-514257-0.
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東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構: ベテルギウスはまだ爆発しない〜減光の原因を探り恒星の質量、サイズ、距離を改訂〜
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発行者:金谷一朗(いち)
TEDxSaikaiファウンダー・パイナップルコンピュータ代表・長崎大学情報データ科学部教授
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