【第6号】ツタンカーメンが手にした天と地からの贈り物

エジプトで最も有名な男「ツタンカーメン」の美とその背後にある科学
金谷一朗(いち) 2021.01.29
誰でも

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いちです,おはようございます.

ツタンカーメンのマスク, Roland Unger, CC BY-SA 3.0

ツタンカーメンのマスク, Roland Unger, CC BY-SA 3.0

先日,エジプト考古学者の河江肖剰先生のオンライン講義を受講しました.古代エジプトって面白いですね.古代エジプトと言えば,やはり第18王朝の少年王「ツタンカーメン(トゥト・アンク・アメン)」でしょうか.あの黄金のマスクの輝きは誰もが映像や写真で観たことがあるでしょう.ひょっとしたら本物をご覧になった方もいらっしゃるかもしれません.

鉄:ツタンカーメンの短剣

ツタンカーメンに関して2016年に大きな発見があったことをご存知でしょうか.彼と一緒に埋葬されていた短剣が,隕石から作られていたことがわかったのです.このツタンカーメンの短剣は,科学的に言えば「鉄」と「ニッケル」という金属の合金で出来ていました.[参考文献1]

ツタンカーメンの短剣

ツタンカーメンの短剣

ツタンカーメンがファラオ(古代エジプトの王)に在位したのは紀元前1333年頃から紀元前1324年頃とされています.この頃,現在のトルコのアジア部分にあたるアナトリアのヒッタイト人たちだけが鋼(はがね,スティール)を作る技術を持っていました.鋼とは鉄に少しの炭素(カーボン)を溶かしたもので,自然の鉄に比べると固く,割れにくく,加工しやすいものでした.他の地域の人々は,鉄を手に入れることは出来ても,そこから鋼を作ることは出来ませんでした.

しかし,例外がひとつだけありました.良質な鉄合金を偶然手に入れられたら,話は別なのです.ではどこで,良質な鉄合金を手に入れられるでしょうか.

視点をうんと広く持ってみましょう.

宇宙に浮かぶ地球を思い浮かべてください.どのようなイメージを持たれたでしょうか.水の惑星?大気に覆われた星?

By NASA/Tracy Caldwell Dyson, Public Domain

By NASA/Tracy Caldwell Dyson, Public Domain

宇宙スケールで見ると,地球は「とろとろに熔けた鉄のしずく」です.表面には鉄よりも軽い物質が浮かんでいて,冷えて固まっています.その表面に薄く海水がまぶされていて,少量の空気がトッピングされています.このような様子を以前YouTube動画でお話しましたので,もしお時間があればご覧になってください.

というわけで,地球のコアを掘り出すことができれば,良質な鉄を手に入れることが出来るかもしれません.火山は地球の内部から熔けた「しずく」が吹き出している場所なのですが,地上で手に入るしずく,つまり溶岩は残念ながら不純物が多すぎます.そう,我々が唯一手に入れられる天然の良質な鉄合金は「他の星のコア」なのです.

宇宙に浮かぶ惑星や小惑星が何らかの理由で砕け散ったもの,つまり星屑が,地球の重力に捕まって地上に落ちてくることがあります.これが「流れ星」ですね.地上にたどり着いた流れ星を我々は「隕石」と呼びます.隕石の中でも特に多く鉄を含むものを「隕鉄」と呼びます.隕鉄は鉄の他にニッケルをよく含んでいます.鉄・ニッケル合金は鋼のように優れた性質を持ちますが,地上で見つかることは隕石由来のもの以外に無く,また人工的に作ることも困難でした.現在でも鉄・ニッケル合金は生産のハードルが高く,かつ兵器の素材としての需要が高い戦略物質であるため,我が国では輸出貿易管理令のもと厳格な輸出管理下に置かれています.

こういった理由から,ツタンカーメンの短剣が隕石(隕鉄)つまりは「天からの贈り物」で作られていた言えるわけですね.

金:ツタンカーメンのマスク

では,ツタンカーメンのマスクの方はどうでしょうか.マスクは黄金(金,ゴールド)で作られており,他にラピスラズリ(青),カーネリアン(赤),黒曜石(黒),ターコイズ(青緑)などから出来ています.色彩の話はまたいずれこのニュースレターでしたいと思っていますので,今週は黄金についてお話したいと思います.

金は人の目に美しく,錆びることがなく,加工しやすいために,世界中で美術工芸品として,富の象徴として,また貨幣としても用いられてきました.

古代エジプト語では金はヌブと呼ばれていました.古代エジプト人たちは,金をヌビア(現在のエジプト南部からスーダン)の地から手に入れていました.この金は地球に含まれていた金属で,自然金として産出します.金は錆びないため,きらきらしたままの姿で見つかります.

金もまた,星の爆発から生み出されたものなのですが,鉄と違って化学反応をほぼ起こさないことから,比較的ピュアな状態で地上に残っています.「比較的」と断ったのは,銀のような他の金属と混じり合っていることがあるからです.金を意図的に他の金属と混ぜ合わせたものは,後でご紹介しましょう.

ツタンカーメンのマスクの黄金は,ヌビアの地から手に入れたもの,つまりは「地からの贈り物」と言えるでしょう.

ところで,金は地上に20万トン弱しか無いことがわかっています.金は1立方メートルあたりおおよそ20トンの重さがありますから,地上の金は1万立方メートル弱しか無いことになります.どのぐらいの量かというと,オリンピック公式50mプールで4杯弱ということになります.そうなんです,金はプール4杯分に満たないのです.そりゃあ奪い合いにもなりますよね.

カラーゴールド

話は変わりますが,僕は金属アレルギー持ちなんです.20代のころ,なぜかちゃらちゃらとしたシルバーアクセサリを身に着けていたんですよね.髑髏(どくろ)の指輪とかですね.アクセサリとしては大変に質の悪いもので,それが原因だったんじゃないかと思っています.

先程,金(黄金)は化学反応をほとんどしないと書きました.確かに純金は肌に触れても化学反応を起こしませんから,アレルギーの原因になることもまずありません.ただし,純金は大変に柔らかく,そのままでは装飾品にはなりません.そこで,金に他の金属を「割り金」として混ぜて合金とすることが古来から行われてきました.このような金の合金をカラーゴールドと言います.ツタンカーメンのマスクもまた,主に色合いの調整のため,そしておそらく硬さの調整のために他の金属が混ぜられているようです.

金はアレルギーを起こさないのですが,この割り金のほうがアレルギーの原因になることがあります.というわけで,僕のように金属アレルギーをお持ちの方のために,豆知識として「金属アレルギーを起こしにくい金属」をご紹介しておきましょう.なお,結論を先に書いておくと,カラーゴールドの大半は金属アレルギーの原因になり得ます.

イエローゴールド.金と銀と銅を混ぜたもの.銀,銅が金属アレルギーの原因になることがあります.

グリーンゴールド(青金).金と銀を混ぜたもの.銀が金属アレルギーの原因となることがあります.僕が一番ダメなやつですね.

レッドゴールド(赤金).金と銅を混ぜたもの.こちらも銅が金属アレルギーの原因となることがあります.ピンクゴールドは銅の他にパラジウムを少し混ぜたものです.

ホワイトゴールド.金にニッケルまたはパラジウムを混ぜたもの.他にも何種類かの金属を混ぜることが多いようです.ニッケル,パラジウムともアレルギーの原因となることがあります.時計メーカーでは腕時計の裏蓋や金属バンドに「ニッケルフリー」をうたっているところもありますね.これなんかも,金属アレルギー対策です.

パープルゴールド.金とアルミニウムを混ぜたもの.アルミニウムは比較的金属アレルギーを起こしにくいと言われていますが,パープルゴールドそのものがあまり一般的とは言えないので,なんとも言えません.

ブルーゴールド.金に鉄を混ぜたもの.鉄も比較的金属アレルギーを起こしにくいと言われていますが,ブルーゴールドもまだ一般的とは言えないので,なんとも言えません.

あら,カラーゴールドは全滅ですね…では白金(プラチナ)はどうでしょうか.白金は金と同じくほとんど化学反応を起こさないため,単体であれば身に付けられそうです.しかし,白金も宝飾品にはそのままでは用いられず,硬さ調整のためにパラジウムが混ぜられます.このパラジウムが金属アレルギーの原因となることがあります.

金属の族(ぞく)

金属はいくつかの「族(ぞく)」にグループ分けすることが出来ます.今まで見てきた金は「銅族」というグループに入ります.「銅族」には金の他に,銀,銅が入っています.同じ族の金属は,性質が似ています.

そして,金属アレルギーを比較的起こしにくい族が知られています.それらは,チタン族,バナジウム族,クロム族,白金族です.これらのうち,色味が良くて(近代の)加工技術に適した金属は,金属アレルギー持ち向けの装飾品として用いられています.

チタン族からは,チタン,ジルコニウム,ハフニウム.バナジウム族からはニオブ,タンタル.クロム族からはタングステン.白金族からはイリジウムが代表例と言えるでしょう.これらはまだ一般的な宝飾店ではそれほど見かけるものではありませんが,日本では指輪に加工してくれる業者や職人がいます.(僕はこれらの中で最も黒いタンタルの指輪をしています.)

特に面白いのはイリジウムかもしれません.かなり高価な上に,色合いもイリジウムならではというわけではありませんが,地球を構成していたイリジウムは地球コアに溶け込んでしまったと考えられており,地上で手に入るイリジウムのほぼ全てが「隕石由来」と考えられているのです.例えば約6600万年前にユカタン半島に落ちた天体,チクシュルーブ隕石(またはチクシュルーブ小惑星)は恐竜を絶滅させたと考えられていますが,世界中に薄くイリジウムをばらまいたようです.

「天からの贈り物」であるイリジウムは,ツタンカーメンの時代の鉄のような存在なのかもしれませんね.

悪魔の銅?

金属のお話の最後に,これまで何度か登場したニッケルについてお話をしておきましょう.ニッケルの語源はドイツ語のクプファーニッケル.「銅(クプファー)」だと思っていたら違う金属だった,これは「悪魔の(ニッケル)」銅だ!ということらしいです.元々は使い道がわからない金属だったのですね.

ニッケルは現代社会では絶対に欠かせない金属になっています.前述のホワイトゴールドの他にも,例えば,銅とニッケルの合金「白銅」.これは50円硬貨,100円硬貨,初代の500円硬貨の他,アメリカの5セント硬貨等にも使われています.白銅は銀に似ていながら錆に強いため硬貨に適している他,有事の際には国が回収して鉄・ニッケル合金の生産に回せるため,とも言われています.

悪魔を語源に持つ金属が,鉄とともに今や国家を支えているのですね.金属の歴史は本当に面白いです.錬金術のお話もまたいずれ,このニュースレターでお送りしたいと思います.

おすすめ書籍

古代エジプト第18王朝の女王「ハトシェプスト」を主人公にした漫画です.

運命を切りひらき,少女は偉大な王となる――. 現代から約3500年前,古代エジプト.男性が王座につくことが当たり前だった時代に,女ファラオとして国を治めたハトシェプストという人物がいた.“男装の女王"と謳われるほど,強く気高く生きた彼女の激動の生涯,その幕が,いま上がる!
Amazon.co.jp

僕はまだ読んでいる最中なのですが,いやあ引き込まれる.僕はエジプト史の教育を受けいなくて,せっかく古代エジプトの遺跡や遺物を見ても当時の世界観を想像することが困難だったのですが,この漫画をきっかけにいろいろ想像と言うか妄想が膨らむようになりました.本当は史実から組み上げていかないといけないんですが,そこは素人の特権ということで,河江先生にはお許し頂きましょう.

さて,白状すると,僕は骸骨フェチでして,女性の骨格とか髑髏(しゃれこうべ)の形が好きなんですよね.日本のエイゾーという会社がヨーロッパでX線ヌードカレンダーを公開したときには「ついに俺の時代が来たか」と小躍りしたものです.

ハトシェプスト女王(メトロポリタン美術館)

ハトシェプスト女王(メトロポリタン美術館)

この漫画の主人公,ハトシェプスト女王はミイラが残っていまして,エジプトのカイロ博物館に安置されています.とても骨格の綺麗な女王でした.ハトシェプスト女王のミイラは新しい博物館 (National Museum of Egyptian Civilization) へ移送されることが決まっているようです.また会いたいなあ.[参考文献3]

おすすめTEDトーク

TED

TED

1台のトースターが作られるまでにあらゆる文明の過程を経ることになります.デザイナーのトーマス・トウェイツは,鋼を得るために鉱石を採掘したり,油からプラスチックを精製したりするなど,いささか困難な方法で1からトースターを作る事を試みました.個人としていけるところまでいった事に実に驚かされるでしょう.彼は,デザイナーも消費者も同じであるという相互に繋がった社会の寓話を披露します.
TED

トーマス・トウェイツは自然界から鋼,マイカ,プラスチック,銅,ニッケルを得ようと試みます.マイカは日本語で「雲母(うんも)」または「きらら」とも言います.熱を通しますが電気を通さないため,トースターやアイロンなどのヒーター部分によく使われています.

どんなトースターが出来上がるのか,彼のほとんど無茶苦茶な挑戦を,ぜひリンク先で御覧ください.

Q&A

匿名質問サイト「マシュマロ」で質問を受け付けています.普段はツイッターでお返事を書いていますが「ニュースレター読んでます」と入れていただければ,こちらのニュースレターでより長めの回答を書かせていただきます.

今週は,1年前に頂いた質問に改めて回答したいと思います.

鍋が美味しい季節になりましたね.先生はどんな鍋料理が好きですか?

鍋!鍋!

秋冬はもう毎日鍋ですよ.

まず,昆布と干し椎茸でお出汁をとります.普通は鰹節だったりとか,僕の住む長崎ではアゴ(飛魚)でお出汁をとるところだと思うのですが,お出汁の段階では菜食にしておくほうが好みなんですよね.そのまま野菜ときのこだけのお鍋にしちゃうこともありますし,お魚を入れたペスクタリアンにすることもあります.お肉が駄目なわけじゃなくて,ただなんとなくきのこや魚が好きなだけなんです.

家畜をほとんど食べて来なかった日本人ですが,見方によっては実は他の民族よりも「野蛮」なんじゃないかなと最近気づいたんですよね.というのは,海洋生物から見てみると,奴ら(日本人)は逃げ回っているところを襲ってくるし,捕まったら生で食われるし,未だに飼育(養殖)よりも野生(天然)のほうが好まれるし...

というわけで,魚を好んで食べる僕は,自分をかなりの野蛮人だと思っています.そんな僕ですが,九州に引っ越して驚いたのは,魚の生食への執念のようなもの.以前,海外の論文で「日本人はなぜ魚を生食できるのか」というテーマのものを見つけたことがあり「日本近海の魚だけが安全なのか?ノー」「日本人は特別な胃を持っているのか?ノー」「ひょっとしたら調理技術か?いや,そんなことは考えられない!ノー!」という内容でした.僕にはその論文が追い求めていた答がなんとなく判った気がします.

美味いものを食うためには命がけで冒険する.

このニュースレターをお読みの皆さんも,もしお造りやお鮨がお好きなら,かなりの冒険者ですよ.

こちらの匿名質問サイトで質問を受け付けています.質問をお待ちしております.

https://marshmallow-qa.com/kanaya

ポッドキャストのお知らせ(+α)

今週もポッドキャストを続けてみました.今週は【創刊準備号】のアップデートと前回【第5号】「最も美しい関係」の振り返りをお届けしました.こちらもまた皆さんのコメントを頂ければありがたいです.

iPhone/Mac からは以下のリンクでお聞きいただけます.

Android/PC からは以下のウェブサイトでお聞きいただけます.

そうそう,今週Clubhouseデビューしました.アカウントをお持ちの方はフォローしてみて下さいね.僕のアカウントは @kanayafrica です.

あとがき

10年前の今週(1月25日)に,後に「エジプト革命」と呼ばれる革命運動が始まりました.

僕が所属するエジプト調査隊のシニアメンバーであり,畏友でもある河江肖剰先生(ゆきさん)が先にエジプト入りしていたんですよね.革命運動が始まった直後にエジプト政府はインターネットや現地の電話ネットワークを遮断しました.日本とエジプトの通信に唯一使えたのが,ボーダフォン(当時)にローミングされたソフトバンク携帯によるショートメール(SMS)でした.ただし,片道100円の通信料が日本側の携帯にかかります.

日本ではほとんど報道されない中,僕はゆきさんからショートメールを送ってもらい,それをリアルタイムでツイートしていました.ツイッターはもともとショートメール向けのサービスから出発していますから,文字数はぴったりだったんですよね.もう通信料はどんと来いという気分(だけ)で,がんがんツイートしていたのですが,通信料が数十万円を越したあたりで,ソフトバンクの孫正義さんにツイートを投げてみたんです.エジプトの状況を伝え,ソフトバンク携帯しか使えないこと,通信料が高額になっていることを,ツイッターを通して訴えてみました.このツイートはお陰様でたくさんリツイートされました.

阪急京都線に乗って,非常勤講師をしていた大学へ向かう途中,ツイッターの通知が鳴り止まなくなって,孫さんから「やりましょう」というお返事を頂いたことを知りました.日本ではあまり報道されていなかったこともあって,フェイス・トゥ・フェイスでは味方になってくれる人が少なかったのですが,ネットの向こうに膨大な数の味方が居ること,孫さんのような影響力のある人物が理解を寄せてくれたことを知って,一気に緊張の糸がほぐれたのだと思います.電車内で,床を叩いて号泣しました.どう見ても不審者ですね.

同年2月11日,エジプトのムバラク元大統領(故人)が辞任しました.実はこの日,僕も極度の疲労でぶっ倒れていたんですよね.なにせ学生の修士論文とか,卒業制作も重なっていたので.

革命の前後,エジプトは大混乱に陥り,ツタンカーメンのマスクが保管されているカイロ博物館にも盗賊が侵入しました.幸いマスクは無事でしたが,いくつかの遺物が盗み出されました.またエジプト各地の遺跡が荒らされました.このような状況で,とにかく記録だけでも残さねばと思い,ゆきさんと協力して Tweet and Treat キャンペーンを始めました.僕たちのツイートが1回リツイートされるたびに1米ドルを僕たちからエジプトの調査団体へ寄付するというものです.ストレートに寄付をしても良かったのかもしれませんが,少しでもエジプトの危機を知ってもらおうという試みでした.(少し遅れて同じ試みを,同じ名前で実施したマイクロソフトは炎上しました.)ありがたいことに,現金を寄付してくださる方も現れました.集まったお金と自分たちのお金を合わせて,デジタルカメラなどの記録機材をエジプトへ贈りました.

ところで,今週,隕石のとある成分に新しい名前「ポワリエライト」がつけられました.成分は従来知られていたものなのですが,構造が異なるとのこと.まだまだ発見があるのですね.[参考文献2]

隕石に含まれる鉄とニッケルも今となっては身近な金属ですが,それでも地上では決して見ることの出来ない構造を持っていることがあります.鉄とニッケルで出来ている隕石の一種に「オクタヘドライト」というものがありますが,非常に美麗な構造(ウィドマンシュテッテン構造)が見られます.これは鉄ニッケル合金が「数百万年」単位でゆっくりと冷やされないと出来ない構造で,地球上では見つかっていません.僕は琉球大学の先生に実物を見せていただいたことがあるのですが,本当に感動しました.それは宇宙の年輪とも言えるものでした.

ウィドマンシュテッテン構造, H. Raab

ウィドマンシュテッテン構造, H. Raab

ではまた来週お目にかかりましょう.

参考文献

***

ニュースレター「STEAM NEWS by Ichi」

発行者:金谷一朗(いち)

TEDxSaikaiファウンダー・パイナップルコンピュータ代表・長崎大学情報データ科学部教授

Photo by Patrick Schneider on Unsplash

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