結婚の数学【第32号】

「安定結婚問題」「秘書問題」「親族の基本構造」と呼ばれる数学問題を解説
金谷一朗(いち)
2021.07.09
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【140字まとめ】「結婚」に関する数学の話題を3点お届けします.ひとつめは「合コン」で誰もが浮気をしないようにする数学的な方法.ふたつめは人生のどのタイミングで結婚すべきかを知る数学的な方法.みっつめは「知の巨人」と呼ばれたレヴィ・ストロースが「やらかした」婚姻と数学の関係についての説明.

いちです,おはようございます.

今週は「結婚」に関する話題を3点,お届けします.

1点目は「安定結婚問題」です.と言っても,結婚生活の問題ではありません.こういう名前の数学問題があるのです.この「安定結婚問題」を解いたアメリカの経済学者ロイド・シャープレーは2012年にノーベル経済学賞を受賞しています.

2点目は「秘書問題」という別の数学問題です.こちらは別名を「結婚問題」と言うのですが,確かに結婚に応用できるのかも,と思えなくもない問題設定です.

数学者たちは何やら結婚にこだわっているようにも見えますが,いずれも「ものの例え」なので,実際の結婚とは関係がありません.

最後に余録として,本当の結婚について数学的考察を加えたレヴィ・ストロースの説をご紹介したいと思います.

安定結婚問題

どうか皆さん,ここで合コンをイメージしてください.現実にはコロナ禍で合コンどころではないのですが,想像上の合コンということでひとつお付き合いください.話をシンプルにするために,男性3名,女性3名が集まっているとし,全員が異性愛者(ヘテロセクシャル)とします.

男性も女性もそれぞれ,付き合いたい人に順位付けをした希望リストを作ります.男性の名前を例えばアーロン(a),ベン(b),クリス(c)としましょう.女性の名前はアナ(A),ブリタニー(B),クローディア(C)としましょう.

アーロン(a)の希望リストはこうなっています.1位:ブリタニー(B),2位:クローディア(C),3位:アナ(A).誰でもいいんかいってのは置いておきます.アナの希望リストはこんな感じです.1位:ベン(b),2位:クリス(c),3位:アーロン(a).最初の合コンで順位付けなんで出来へんわ,ぶーぶー,というのも置いておきます.

このようにして,6人全員が希望リストを作ります.リアルな合コンでは3位とかもう脈なしだとは思うのですが,ここはもう,無理矢理にでも順位付けしたものとしてください.男性3人(a〜c)と女性3人(A〜C)が希望リストを作ります.この希望リストを「選好(せんこう)順序」と呼びます.

男性,女性からもう1例ずつ選好順序を書き出しておきましょう.ベン(b)の選好順序はこうです.1位:アナ(A),2位:ブリタニー(B),3位:クローディア(C).ブリタニー(B)の選好順序はこうです.1位:クリス(c),2位:アーロン(a),3位:ベン(b).まとめると次のようになります.

男性3名,女性3名の合コンのイメージ(クリスとクローディアの選好順序は省略)
男性3名,女性3名の合コンのイメージ(クリスとクローディアの選好順序は省略)

さて,ここで全員の希望リストを壁に貼り出します.このときに,うまく調整すると,全員が「これ以上は望めない」というマッチングを行えます.この調整の仕方は「ゲール=シャープレーの方法」として知られています.

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