皆既月食と竹取物語【第273号】
いちです,おはようございます.
2026年3月3日(旧暦1月15日)に日本では皆既月食が観測できる見込みです.僕は残念ながらエジプト調査中で観られないのですが,日本では18:50から月が欠け始めますので,ぜひ東の空を御覧くださいね.

竹取物語
日本の月……と言えば「竹取物語」でしょう.「竹取物語」は平安時代に成立した日本最古の物語文学です.竹から生まれた美しいかぐや姫と,彼女を育てた竹取の翁(おきな),求婚者たち,そして月の都への帰還という幻想的な物語が描かれています.かぐや姫が提示する「難題」や,最後に月の世界へ戻る結末は,時代を超えて多くの人びとに親しまれ,日本の文学や文化に大きな影響を与えています.
かぐや姫が月の都へ帰るのは旧暦の8月15日,現代で言うと中秋の名月にあたります.かぐや姫を閉じ込めようとした竹取りの翁は,この日こそはと月食をも望んだでしょう.実際,月食は満月の晩,旧暦15日にしか起こりませんから,可能性はゼロではありませんでした.
竹取物語には月食が描かれていませんが,竹取物語の作者は月食を体験した可能性はかなり高いです.竹取物語が書かれた平安時代には,宮廷や陰陽寮によって天文現象が詳細に記録されていました.たとえば「日本三代実録」(901年成立)など歴史書には天文現象が何度も記載されています.したがって当時の知識人階級,すなわち竹取物語の作者が月食を見聞きする機会は多かったと考えられます.
また月食は,おおよそ半年に1回,時によっては年2~4回発生します.皆既月食はいくらか少ないものの,50年以上生きていれば複数回目撃するのが通常です.9~10世紀の平安時代も例外ではなく,夜空と月の変化が身近な現象でした.
当時の貴族は和歌や日記,物語などを通じて自然現象を頻繁に詠み,月の美しさや満ち欠け,異変は感性を大きく刺激しました.「古今和歌集」等にも天文現象を題材にした歌が多数見られます.竹取物語の作者が,教養としても月食を知っていて当然でした.
竹取物語の成立は10世紀初頭と推定されており,その時代には日本各地で月食が観察されていました.中国や日本の暦法で暦・天文学が重視され,宮廷文化の一部として月食観測が行われていました.
というわけで,竹取物語の作者(菅原道真?)は月食を知っていたはずなのです.
そして,人類は古来から月食の「予報」をする方法も模索していました.その成果のひとつが「サロス周期」という周期の発見です.
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(Cover Photo by Camilo Contreras on Unsplash)
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